File 13. MUDKEEPR(マッドキーパ)
どこにも属さないサスライ者
-誰も拒まず、誰にも留まることを求めない海獣 -
01. 海獣基本情報 / Creature Data
海獣名:MUDKEEPER(マッドキーパー)
分類:ムツゴロウ型さかいめモンスター
モデル魚:ムツゴロウ(学名 Boleophthalmus pectinirostris)
目撃地:ウルグアイ・コロニア・デル・サクラメントの民泊宿が最後
心の煩悩:帰属からの逃避
02. ステータス / Status
こうげき力 / ATK — 35
まほう力 / MATK — 75
ゆうわく力 / CHARM — 80
やみレベル / DARK LEVEL — Lv95
ひっさつワザ / Ultimate Skill
『ドッチツカズ』: 争いごとを一瞬で沈めるが、その場の全員が優柔不断になりオロオロ挙動不審になる。
03. 海獣生態と心 / Ecology & Psyche
MUDKEEPER(マッドキーパ)は、水にも陸にも属さない海獣である。
昔、彼が棲んでいたのは、大河が海へと流れ込む河口の泥地。満潮になれば水に沈み、干潮になれば陸が現れる。
そこでは昨日までの道が消え、昨日までの海が地面になる。
MUDKEEPERは、そんな曖昧な場所を何よりも愛していた。
彼の身体には、乾いた泥の茶色と、水面を映した青や緑が入り混じっている。
大きく飛び出した眼は、いつも少し離れた二つの世界を眺めている。
いつの日か彼は、そんな干潟を飛び出し、安宿を転々とするようになった。
- 境界に建つ旅人の宿 -
MUDKEEPERが最後に目撃されるたは、ウルグアイの古い港町、コロニア・デル・サクラメント。
世界中のバックパッカーに人気の安宿に棲みついていた。
その宿には、看板も立派な玄関もない。
誰かが訪れれば、彼は大きな眼を動かし、泥だらけの足で扉を開ける。
旅人、船乗り、故郷を失った者、どこへ行けばよいのかわからない者。
MUDKEEPERは、どんな客でも歓迎した。
出身も、身分も、旅の目的も尋ねない。
客が話したければ耳を傾け、黙っていたければ一緒に黙っている。
彼の宿に泊まった者は、不思議と自分の居場所を探す焦りから解放されたという。
「ここにいる間は、どこにも属さなくていい。」
それがMUDKEEPERの口癖である。
- どっちつかずの魔法 -
MUDKEEPERの必殺技『ドッチツカズ』は、あらゆる境界を曖昧にする魔法である。
敵と味方。
内側と外側。
正しい者と間違った者。
彼が泥を跳ね上げると、それまで明確だった区別が一時的に溶けてしまう。
争っていた者たちは、自分がなぜ相手を敵だと思っていたのか、わからなくなる。
だが、この魔法には弱点がある。
境界を消すことはできても、そこから先に何を選ぶべきかまでは教えてくれないのだ。
MUDKEEPERは、決断を迫られると途端に困った顔をする。
右でも左でもいい。
行っても残ってもいい。
彼はいつもそう言う。
しかし、ときにはどちらかを選ばなければ、守れないものもある。
- 居場所を持たない者の孤独 -
MUDKEEPERは、自分が自由な存在だと信じている主人の宿に棲みつく。
国にも、土地にも、集団にも縛られない。
誰かを拒むことも、誰かに従うこともない。
けれども彼は、誰かに「ずっとここにいてほしい」と言われることを恐れている。
その言葉を受け入れれば、自分にも帰る場所ができてしまうからだ。
宿には、毎日のように新しい旅人がやってくる。
そして、いつか必ず出ていく。
MUDKEEPERは笑顔で見送り、決して引き留めない。
誰も失わないためには、最初から誰も自分のものにしなければいい。
いつしか彼は、そう考えるようになっていた。
どこにも属さない自由が、誰かと深くつながる自由を奪ってしまう。
これがMUDKEEPERの心に潜む煩悩である。
今日も潮が満ちれば宿の前の道が消え、潮が引けば再び現れる。
MUDKEEPERはその変化を眺めながら、新しい客を待っている。
いつか、誰かが旅立つとき、
彼は初めて「行かないでくれ」と言えるのだろうか。
04. モデル『ムツゴロウ』とは? / What Is a Mudskipper?
ムツゴロウ(Boleophthalmus pectinirostris)は、日本では有明海沿岸などの干潟に生息するハゼの仲間である。
魚でありながら、水から出た泥の上で活発に活動することで知られている。
- ムツゴロウはなぜ陸上で活動できるのか? -
ムツゴロウは、湿った皮膚や口・喉の内部などを通じて酸素を取り込むことができる。
陸上では胸びれを使って身体を支え、泥の上を移動する。
また、頭の上に突き出した眼によって、身体を低く保ったまま周囲を見渡すことができる。
水中だけでなく陸上にも活動の場を持つ、独特な魚なのである。
- 干潟で暮らすムツゴロウの生態 -
ムツゴロウは、干潮時に現れる泥の表面で、主に珪藻などを食べて暮らしている。
繁殖期には雄が縄張りを持ち、求愛のために跳び上がる行動も見られる。
泥の中には巣穴を掘り、潮の満ち引きに合わせて活動する。
水と陸の境界に適応したその生態は、MUDKEEPERの「どこにも属さない」という人格の着想源となっている。
なお、実在するムツゴロウは東アジアに分布する魚であり、ウルグアイの目撃地は創作上の設定である。
05. MUDKEEPERに何を想う?
彼が最後に見つける居場所は、
水の中でも、陸の上でもなく、
誰かに「ここにいてほしい」と願われる場所なのかもしれない。
Art & Story by KAMBA
※海獣の能力・人格・物語・目撃地は創作です。ムツゴロウの生態に関する記述は実在の魚をもとにしています。