File 15. BRIWARD(ブリワルド)
旅の記憶を食べる怪物
-放人に棲みつき終わらない旅へ誘う海獣-
01. 海獣基本情報 / Creature Data
海獣名: BRIWARD(ブリワルド) /
分類: シロザケ型ほうろうモンスター
モデル魚: シロザケ (学名 Oncorhynchus keta)
目撃地: アラスカ・シトカ周辺の海域
心の煩悩: 放浪への執着
02. ステータス / Status
こうげき力 / ATK — 75
まほう力 / MATK — 85
ゆうわく力 / CHARM — 30
やみレベル / DARK LEVEL — Lv110
ひっさつワザ / Ultimate Skill
『マタイコウヨ』: この言葉を囁かれた人は、全財産を叩いて旅に出かけ、二度と帰って来ることは無いという。
03. 海獣生態と心 / Ecology & Psyche
BRIWARD(ブリワルド)が巨大な口を開くと、喉の奥に無数の海流が生まれる。
そこには、地図にない島、誰も知らない港、水平線の向こうに眠る未知の大陸が映し出される。
その光景を見た者は、今いる場所が急に色褪せて見え、すべてを投げ出して旅へ出たくなる。
しかし、この魔法には恐ろしい秘密がある。
BRIWARD自身もまた、その幻に囚われているのだ。
BRIWARDが最も恐れているのは、嵐でも、海の怪物でもない。
それは、旅が終わってしまうこと。
見知らぬ土地への好奇心が失われたとき、BRIWARDは死んでしまう。
生まれ故郷はアラスカ州シトカ。若い頃から好奇心が強く、一つの海域に留まることを嫌っていた。
アリューシャン列島、カムチャツカ沖、千島列島周辺。数十年にわたって数え切れないほどの海を渡り、
人間に食べられた後に、海獣となり旅人の心を食べて生きるようになった。
性格は陽気で社交的。旅人を見つけると、どこから来たのか、何を見てきたのかを聞かずにはいられない。
自分の冒険を語るのも大好きだ。
少々話が長いのが玉にきずだが、彼の話を聞いていると、不思議と誰もが旅に出たくなる。
-身体に刻まれた航海の記憶-
BRIWARDの身体には、古い海図、航海日誌、港のスタンプ、色褪せた乗船券が鱗のように重なっている。
青緑の模様は冷たい北の海流。赤褐色の色彩は、遠い港で過ごした年月。
頬には、潮風にさらされて錆びた船体のような金属の輝きが残る。
それらは装飾ではない。彼が棲みついた旅人達の長い旅の記憶が、彼の身体そのものへと変化したのである。
彼は旅人と共に新しい土地へ向かうたびに、少しずつ姿を変えていく。
-自由を求める者の不自由-
BRIWARDは、旅こそが自由だと信じている。
知らない景色を見て、知らない誰かと出会い、世界が昨日より少し広くなる。その瞬間が何よりも好きなのだ。
しかし、いつしか彼は、旅をしていない自分に耐えられなくなっていた。
次の目的地が決まらないと落ち着かない。まだ見ぬ場所があると思うと、今いる場所の美しさにさえ気づけなくなる。
好奇心は彼を自由にした。
そして、その好奇心への執着が、彼を再び縛りつけた。
そして人に棲みつき、人を旅という名の自由へと縛りつけるのだ。
自由でありたいという欲望が、自由を奪ってしまう。
BRIWARDの心に潜む煩悩は、まさにこの矛盾である。
長い旅の果てに故郷の海へ戻ってきた今も、彼は水平線を眺めている。
けれど、いつか気づく日が来るのかもしれない。
世界の広さは、移動した距離だけでは測れないということに。
04. モデル魚『シロザケ』とは? / What Is a Chum Salmon?
シロザケ(Oncorhynchus keta)は、北太平洋に広く分布するサケ科の回遊魚である。
日本でも馴染み深く、一般に「サケ」や「秋鮭」と呼ばれる魚の代表的な種類だ。
シロザケは川で生まれ、海へ下って成長し、成熟すると再び生まれた川へ戻って産卵する。
この性質を「母川回帰」という。
海で生活するシロザケの身体は銀白色だが、産卵期になると赤紫色や緑褐色の婚姻色が現れる。特に雄は顎が大きく変形し、迫力のある姿へと変わっていく。
BRIWARDの巨大な口や、青緑と赤褐色が入り混じる身体は、この産卵期のシロザケから着想を得ている。
-シロザケはなぜ故郷の川へ帰るのか?-
シロザケが生まれた川へ戻る仕組みには、幼い頃に記憶した川の水の匂いが関係している。
また、広大な海での移動には、地磁気などを利用した方向定位が関わると考えられている。
遠い海を回遊しながら、最後には生まれた場所へ帰る。
その生態には、果てしない旅と故郷への帰還という、二つの性質が共存している。
BRIWARDは、このシロザケの生態を、人間の心に潜む「自由への執着」と重ね合わせて生まれた海獣である。
サケの詳しい生態解説はこちら
05. BRIWARDに何を想う?
彼が最後に発見するのは、
新しい大陸ではなく、
どこにも行かなくても満たされる自分自身かもしれない。
Art & Story by KAMBA
※海獣の能力・人格・物語は創作です。シロザケの生態に関する記述は実在の魚をもとにしています